脳卒中について
脳卒中について
脳卒中とは
脳卒中は脳血管障害とも言い、脳の血管が破れたり詰まったりして、その発症部位の機能が失われてしまう病態です。
脳卒中は大きく分けると「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」の3種類に分けられます。
脳梗塞は血管が詰まって、その先の脳細胞が壊死するなどの障害を受ける疾患、脳出血は脳の細かい血管が破れて脳の中で出血する疾患、くも膜下出血は血管のこぶ(動脈瘤)が破れ、くも膜下腔(脳を覆っている3層の髄膜のうち、2層目のくも膜と3層目の軟膜の間の空間)に出血をきたす疾患です。
脳卒中の予防・二次予防について
脳卒中を予防するには、まず危険因子を可能な限り減らすことが重要です。危険因子には、高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、不整脈(心房細動)、喫煙習慣などが挙げられます(高血圧は特に重要な危険因子と考えられています)。こうした明らかな危険因子を持っている人は、医療機関を受診して、その治療に努めてください。食生活をはじめとする生活習慣の改善も大切です。脳ドックの受診も勧められます。
また、もし脳卒中を疑わせる症状(呂律がまわらない、片方の目が見えない、半身の手足が動かなくなった、など)が生じたら、たとえ軽くても、あるいは一時的なもので完全に回復したとしても、専門医への受診を急ぎましょう。「前触れ発作」(一過性脳虚血発作*)を見逃さないことも、非常に重要です。
脳卒中の二次予防は、脳卒中に再びならないように再発を防ぐことです。代表的な脳卒中である脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の中でも、再発しやすいのが脳梗塞です。
特に発症後 1ヶ月以内の再発が多く、1年以内には約10%が、5年以内には約30%の人が再発していると言われます。脳梗塞が発症した後、5年以内に再発する人は、3人に 1人もいることになります。また脳梗塞の再発は、同じ場所に起こるのではなく、多くは別の脳の血管に、同じタイプの脳梗塞が起こります。
脳梗塞の再発は、最初の時よりも後遺症が重症になったり、新たな後遺症が起こったりする危険がありますし、後遺症の数が多くなれば、それだけ日常生活にも大きな支障が出てしまうので、脳卒中の再発を防ぐことはとても大切なことなのです。
当院では、脳卒中の予防、および二次予防(再発防止)に力を入れておりますので、こうした脳卒中の予防管理について、ご相談ください。
*一過性脳虚血発作(TIA):「手足が動かしにくい」「話しづらい」「片目だけが見えにくくなる」などの脳梗塞と同様の症状が起こり、しかしながらしばらくすると自然に治る一時的な疾患です。自然に治ったからと放置しておくと、いずれは本格的な脳梗塞を起こす可能性が高いことが知られています。
脳梗塞
脳梗塞は、脳の血管が細くなったり血のかたまりが詰まったりして、その先に血液が届かなくなって酸素が送られなくなるために脳細胞が壊死するなど、障害を受ける疾患です。詰まった場所によってそれぞれに知覚障害や運動障害、意識障害など、多様な症状が現れてきます。
脳梗塞は、詰まる血管の太さや詰まり方によって3つのタイプに分けられます。
太い血管から枝分かれした細い血管が狭くなって詰まるタイプが「ラクナ梗塞」で、高血圧が主な原因です。動脈硬化で狭くなった太い血管に血栓が生じ、血管が詰まるタイプが「アテローム血栓性脳梗塞」で、高血圧や脂質異常症(高脂血症)、糖尿病などの生活習慣病が主な原因になります。心臓にできた血のかたまりが血流に乗って脳まで運ばれ、脳の太い血管を詰まらせるタイプが「心原性脳塞栓症」で、心房細動(不整脈の一種)が原因となることが多いようです。
脳卒中のいろいろ
脳出血
動脈硬化によって脆くなっている脳の血管に、高血圧による強い圧力がかかり続けていると、ついには破れて脳の中で出血を起こすことがあります。
脳から出血した血液は固まって血腫になり、この血腫が大きくなると、脳の内部の圧力(脳圧)が高くなったり、血腫が周囲の正常な脳細胞を圧迫したりします。こうしたことによる脳細胞のダメージにより、麻痺や感覚障害などの後遺症を招くことが多く、重症例ですと意識障害、最悪の場合には命にかかわることもあります。
かつて日本では、脳卒中と言えば脳出血を指すほどに頻度が高かったものですが、徐々に減少傾向に入り、現在では脳梗塞のほうが多くなっています。
くも膜下出血
頭蓋骨の下には、くも膜という蜘蛛の巣のように張り巡らされた透明な薄い膜があり、その内側に脳があります。脳に血液を送る血管は、くも膜の下を走行しています。この血管にこぶ(動脈瘤*)や動脈硬化が生じると、血圧が高くなった時に急に破れたりします。出血した血液は、くも膜と脳のすき間にどんどん広がっていきます。これが、くも膜下出血です。
何の前触れもなく突然激しい頭痛、吐き気、嘔吐が起こり、そのまま意識不明に陥ることが多い疾患です。出血が軽ければ意識は回復しますが、出血量が多い場合や、脳内に血液が流れ込んだような場合には、死に至るケースもあります(約半数が命にかかわり、社会復帰できるのは3人に1人くらいの割合です)、一度出血した動脈瘤は、短時間のうちに再出血することが少なくないため、入院による絶対安静が必要です。
経験したことの無いような強い頭痛に襲われたら、早急に救急車を呼びましょう。
*脳動脈瘤
脳の動脈のどこかが、こぶ状に膨らんだ状態を脳動脈瘤と言います。
この動脈瘤は通常、血管の枝分かれした部分が、血流に圧されているうちに風船のように膨らんできて形づくられます(分岐部ではない部分に生じることもあります)。そして、破裂しないままの状態にあるこぶを「未破裂脳動脈瘤」と呼びます(近年、脳ドックなどで、破れる前にこの未破裂脳動脈瘤が発見されるケースが増えています)。この未破裂脳動脈瘤が破裂して起こるのが、くも膜下出血です。くも膜下出血を予防するには、破れる前にこぶを発見し、治療を施して破裂を防ぐことです。この治療には、頭蓋骨を開けて動脈瘤をクリップで塞ぐ「開頭クリッピング術」や、極細の管(マイクロカテーテル)を用いて動脈瘤の内側にコイルを詰め、閉塞してしまう「コイル塞栓術」などがあります。脳動脈瘤を閉塞させる薬は、現在のところ存在しません。